助手
今回は岩波新書の『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』を取り上げたいと思います
博士
著者は金成隆一氏。朝日新聞国際報道部記者の人で現在はニューヨーク支局員をやっている人みたいだね。そんな著者がアメリカの各州を巡って『現在のアメリカ』を描いている作品とも言えるかな
助手
なんというか、凄く衝撃的な作品でした
博士
内容はこんな感じ
プロローグ 本命はトランプ
第1章 「前代未聞」が起きた労働者の街
第2章 オレも、やっぱりトランプにしたよ
第3章 地方で暮らす若者たち
第4章 没落するミドルクラス
第5章 「時代遅れ」と笑われて
第6章 もう一つの大旋風
第7章 アメリカン・ドリームの終焉
エピローグ 大陸の真ん中の勝利
助手
この作品で主にピックアップされているのは『アメリカの田舎』ですよね。ニューヨーク州やカリフォルニア州などの大都会ではない地方とも言える場所に住む人々の話です
博士
特徴として、著者が見識や思想を述べるのではなく、テキサス州・オハイオ州・ペンシルバニア州・ミシガン州・ケンタッキー州に赴き、そこに住む普通の人々に政治、特にトランプについてインタビューをしている
助手
日本に住んでいると理解しづらい、サイレントマジョリティとか隠れトランプとかオルトライトとか妙な呼び方をされて十把一絡げに扱われるトランプ支持者達に明確な輪郭を与えていますよね
博士
浮かび上がってくるのは、善良で、素朴で、気のいい真面目なアメリカ人たちなんだよ。2回も大学を出たのにフェンス工場で働いて学費を返し続ける男だったり、未来を憂えるかつての炭鉱労働者だったり、ホットドッグ屋で真面目に働く女性だったりで
助手
彼らがどこで生まれて、どんな風に育って、何を職業として生きてきたか掘り下げるんで、彼らがトランプを支持する、若しくはヒラリーを支持しない理由がよくわかるようになっています
博士
日本人からすると『オバマケアによって保険の掛け金が跳ね上がろ勤め先の保険がカットされた』というオバマケアの犠牲者の存在は驚きだったし
助手
不法移民に悩まされるテキサス州の国境沿いの街の話はキツかったです
博士
『最近、スペイン語ばかり聞くのよ、私の街は(Vidor)は小さな街だけど、どこにいってもスペイン語だらけ』『この前、シャンプーを買ったら、ボトルの説明がスペイン語だった、その次に英語が書かれている』『私たちが彼らに英語で話しかけると、露骨に不機嫌になるのよ。時には怒り出す人までいる。彼らの権利意識があまりに高いことに唖然とするのよ』あたりを読むと『うわぁ……』という感想しかない
助手
ニュヨークやカリフォルニアに住んでいる人には絶対に分からない不快感と恐怖ですよね
博士
そして彼らは大都会に住むインテリ層が自分たちをバカにしていることを知っている、この分断というか断絶は本当に深刻だと思う
助手
ヒラリー・クリントンはトランプ支持者を『惨めな人々のバスケット』呼ばわりしちゃいましたし、日本に情報伝えるインテリの人でもあそこらへんへの侮蔑の視線がある人っていますからね
博士
読む人の年代、性別、人種、社会的地位によって異なる感想とアメリカが浮かび上がってくる作品だと思います。断然オススメしときます
助手
では、今回はこんなところで
博士
それじゃあ
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